露地栽培・無農薬農家の新鮮野菜や料理男子、フードコーディネーターさんによる美味しいレシピなどをご紹介。

【知識人インタビュー②】京都大学農学研究科長・農学部長の宮川恒教授に「農薬の安全性について」お話を伺ってきました。

2016.11.07

京都大学農学研究科長・農学部長の宮川恒教授に「農薬の安全性について」お話を伺ってきました。

宮川恒教授〔右〕と弊社社長の石井〔左〕

宮川恒教授〔右〕と弊社社長の石井〔左〕

 

  • 宮川 恒教授プロフィール

    1957年大阪生まれ。京都大学農学部・大学院農学研究科修士課程を修了。民間の農薬会社で研究業務に従事した後、1989年から京都大学農学部に勤務。助手、助教授を経て2002年から大学院農学研究科応用生命科学専攻生物調節化学研究室担当教授。2013年から同農学研究科長・農学部長。元日本農薬学会会長(2011~2013年)。京都市食の安全安心推進審議会会長

 

農薬は実は安全だった?!その謎を解き明かします!

1

 

農薬の安全性というテーマを考えるとき、3つの視点が必要となります。

1)野菜を食べる消費者への健康影響


2)環境への影響


3)農薬を散布する生産者への健康影響

この3つの視点です。

まずは皆さんが一番気になられるであろう1の視点から宮川教授にお話を伺って行きます。

宮川教授
「結論から言うと、現代に於いて農薬による健康影響はほぼ無いと言えます。」

でも、世間では
「農薬は身体に悪影響を及ぼす」「農薬の影響で子供にアトピーが出来た」なんて話も聞きます。
それについて宮川教授はどうお考えなのでしょうか?

 

「農薬=危険」のイメージが根付いているのは過去のチェック体制が不十分だった?!

42

「確かに、農薬のイメージは非常に悪いですね。『農薬は危険』『農薬は悪』と思われているのを痛感しています。
でも、現代の農薬は農水省や厚労省を中心とした国の機関により厳重に審査されており、 非常に厳しい安全基準をクリアしないと農薬として認可されません。

もちろん、その認可を得た農薬でも度を超えて使用すれば悪影響は出ます。
その使用に関しても厳格なチェック体制が整っており、少しでも基準値をオーバーした作物が見つかれば、その作物はすべて回収となります。

残留基準は、一般的に「その農薬を一生摂取し続けても健康影響 を及ぼす事が無いと思われる量」の100分の1の量に基づいて決定されます。
通常これは非常に低い値です。

しかも、作物が市場に出回る頃には殆ど残留しないような使用方法が定められています。
なので『農薬を安全と思えるか』というのは『基準を定めた国を信用出来るかどうか』と同義だと言っても過言では無いと思います。」

35

なるほど。非常に厳格に管理されており、世間一般で思われているよりも遥かに安全な物なのですね。
でも、「農薬=危険」というイメージを持つ消費者は多いと思いますし、僕も心のどこかでそういう感覚は有ります。
このイメージはどこから来ているのでしょうか?

「過去の農薬には問題点も有りました。1970年代の話ですね。
何が問題かと言うと、その頃は現代のようなチェック体制が整っていなかったんです。

非常に毒性の強い農薬も出回っていたのですが、それを規制する体制も使用状況を監視する体制も十分ではなかった。
その農薬が事故を引きおこすこともあった。
その印象が強く残っているので、極めて安全性が高くなった現在でも農薬=危険というイメージが拭われないのでは無いでしょうか。」

40~50年前は、農薬に関するチェック体制が十分では無かったのですね。
しかも現代では認可されないような毒性の強い農薬も使われており、かつその使用を規制する仕組みも整っていなかった。

これでは、農薬が残留した食べものに対する危険性が心配になった人も値を超える事も有るかもしれません。

 

私たち消費者にとって、農薬の健康被害はないに等しい

6

「繰り返しますが、現代の農薬は非常に厳しい基準をクリアして使用が認可されている。
その際には長期間残留しないことがチェックされ、食べものを通じて体の中に入る量は前述の通り
「一生摂取しても問題無いと思われる数値の100分の1以下」になるように使用が規制されている。
極めて安全性が高いと思いますが、いかがでしょうか?」

確かに、消費者への健康影響という意味では安全性が保証されているようです。

「人間は一生の内で様々な物を摂取します。食品中の残留農薬というのは、その中で影響が非常に少ない部類に入ると思われます。
植物に寄生するカビはしばしば健康に影響を与える強い毒性物質を生産します。
実は植物自身にも有毒物質が含まれています。でもあまりそういうことに神経質にならず、いろいろなものを、バランスよく食べるのが大切だと思います。」

農薬だけではなく、広い視野で食に気を使う必要が有りそうです。

 

生産者である農家さんに対する安全性向上と環境への影響は研究課題。

22

「むしろ、農薬に於ける課題は2と3の環境への影響、生産者への影響なんです。
この2点は正直、まだまだ改良の余地があり研究中です。

まず環境への影響ですが、例えば特定の害虫だけを狙い撃つ薬、というのが実に難しい。
どうしても環境中の他の生物にも多少の影響を及ぼしてしまう。

できるだけ影響を少なくしようとして使用量を減らし過ぎると今度は肝心の害虫や病気に効果が無くなったりする。
仮に特定の害虫だけを退治出来たとしても、その害虫を食料としていた周辺生物の食物連鎖を壊す事になる。
そこまで考えると、本当に難しい話です。

最終的には、「環境とは何なのか?」という話になる。
有史以来人間は自然を開拓して生きて来た訳だし、「有機農法」「自然農法」と言えども結局は 野のままの自然状態ではありません。
どこまでがOKなのか?どこまでが環境を保護している、環境と共に生きている、と言えるのか?そういう話になって来ます。」

つまり、農薬を使ってもその野菜を食べる人にとっては安全。

かつ、農薬を使用すれば生産量も品質も安定しやすい。当然、価格も安くなりやすい。

ところが、田畑に生きる生物には少なからず影響を与えてしまう可能性が有る。

それを許容できるか否か。

20

「もう一つ課題となるのが農薬を散布する生産者への影響の低減。これも大きな課題です。

前述の通り、作物が市場に届く頃には農薬は殆ど残留しませんし、その値は厳格に管理されています。
ただ、散布時には作業をする人が高いレベルの農薬に触れる状況が生じます。

適切な保護具を使わないと、空気中に舞った農薬をそのまま吸い込み、結果として健康影響が出るレベルの量を摂取してしまう可能性が有ります。

安全対策としてマスクや防除衣などの保護具を着用した散布が指導されていますが、特に夏場などはたいへんです。

近年では無人ヘリコプターを使った散布が行われるようになっていますが、これからはもっと簡単にドローンなどを使った散布も研究されるでしょう。
いずれにせよ作業を行う人への影響を低減する技術の開発は重要な課題です。」

宮川教授のお話を伺う限り、消費者への健康影響という意味では現代の農薬は非常に安全性が高いと言えそうです。

しかし環境影響と生産者への影響の低減。 この2点についてはまだまだ研究が必要なようですね。

とはいえ、これは僕らが各地の農家さんを訪問して感じた事ですが、生産状況によっては農薬を使わざるを得なくなるケースも多々有ります。

 

農薬の使用・不使用での味の差はなく、実は農家さんの腕次第だった?!

blog_1_3_3

生態環境に大きな影響を与えない範囲であれば良しとするか、完全に農薬を否定するか。

味に関しては、ハッキリ申しあげて無農薬か否かは関係無く、農家さんの腕だと感じています。
(無農薬、有機の農家さんはこだわりの強い方が多く、その結果として、腕が上がり美味しい野菜を作っているケースは多いです。ただし、「無農薬有機=美味しい」という訳では有りません)

農薬を使えば、(真面目でこだわりを持っている腕の良い農家さんであれば)美味しく健康影響も問題の無い野菜が比較的低価格で手に入ります。
無農薬にこだわれば、生産量が減る分、当然価格は上がります。

無農薬にこだわるのも一つの答え。ある程度視野を広げて考えるのも一つの答え。

どちらの選択も正解なんだと思います。
皆様はどう思われるでしょうか?


こんな記事もおすすめ